- ケガしたことと、過失の割合とは別もの
- 過失割合が大きいと、医療費で慰謝料等を食ってしまうことも
- 過失割合の納得できないときは、ちゃんと資料を確認すること
- 被害者の過失割合が50%以上では、加害者側の損害保険会社は動きません
1. ケガしたことと、過失の割合とは別もの
交通事故においては一般的に「被害者」はケガを負います。加害者でも大きなケガを負う場合もあります。「被害者」とは、一般的にはケガを負った人というくらいの意味でつかわれます。交通事故の原因がどちらにあるかを示す過失割合はどちらが大きいかまで示すものではありません。
自動車安全センターが発行する「事故証明書」を見ると、警察はどちらが過失が大きいと判断しているかが分かります。(この警察の判断が確定という事ではありませんが、一応の目安になります。)この事故証明書で「甲」に書かれた方が過失割合が大きく、「乙」に書かれた方が過失割合は少ないことになります。過失割合が大きいと見られている「甲」がケガをしている場合は、「甲被害者」と言われます。
なお、警察は民事不介入を原則にしているようで、個々の交通事故で、加害者の過失割合は何割くらいと明言することはほぼないようです。
過失の割合に不満があるとき、或いは被害者側の過失が大きいという理由で相手側の損害保険会社が動かないときは、交通事故の専門家にご相談下さい。
2.過失割合が大きいと、医療費で慰謝料等を食ってしまうことも
事例 バイクのAさんは車と接触して大けがをしたが過失割合が60%とされたとします。医療費が100万円かかり、慰謝料は150万円とされたとします。医療費の60%である60万円は自分に責任があるので、負担します。慰謝料は60%は減額されて40%に当たる60万円を貰うことになりますが、医療費の自己負担60万円と相殺されて0円になります。
自分の過失割合が大きいとき、50%を越えるときは加害者側の損害保険会社はほぼ相手してくれません。動きません。自分の健康保険で治療することです。これに近い過失割合の場合は、相手側の損害保険会社が医療費を支払うことになっても、後に自分の健康保険扱いで治療し、窓口で3割負担分を立替て払いする方法をお勧めします。
相手側の損害保険会社から自分の健康保険を使うように勧められたが、納得がいかないときは、交通事故の専門家にご相談下さい。
3. 過失割合に納得できないときは、ちゃんと資料を確認すること
「車」 を交通事故の一方の当事者とする場合は、東京地裁民事交通訴訟研究会編 別冊判例タイムズ38の「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を元に過失割合を判断します。
自転車同士や自転車と人の場合は、別冊判例タイムズ38の「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」と、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会遍の自転車事故過失相殺の分析が参考になります。
5%でも変わると大きいです。過失割合の確認のためには、交通事故の専門家に相談しましょう。
過失割合をちゃんと争う場合は、
- 上記の本
- 事故現場を見てみる。
- 検察庁保管記録の閲覧
- (時には)事故状況発生図の作成
等の手立てを取ることもあります。
相手側の損害保険会社もプロですので、損害保険会社から提示された過失割合が、5%か10%変わることはありますが、これを越えて変わることはほとんど希です。
たまに、ケガした方の過失割合が50%を越えないと思われるケースでも、「あなたの方が過失割合が大きい」といって、ケガした人の相手をせず、ほっぽり出す乱暴な担当者もいます。この時は、とにかく自分の健康保険で治療だけはとりあえず続けて下さい。事故から1週間以内に病院にかからない、あるいは前の診療から1ヶ月病院に行かないと交通事故の因果関係を否定されかねません。
なお、物損で示談したときの過失割合を戻すのは大変です。戻せるのは5%くらいでしょうか。
4. 被害者の過失割合が50%以上では、加害者側の損害保険会社は動きません
これは、加害者側の損害保険会社がお金を出す必要がないからです。
この場合は、早い段階で、交通事故の専門家に相談下さい。
治療費の捻出もですが、下手すると事故との因果関係を否定されたり、手術や治療の時期を逸することにもなりかねません。
5、自賠責保険で重過失の認定をされ、減額された?
過失割合が70%以上と認定されると、自賠責による傷害の損害についての保険金の支払いが減額されます。この減額に納得がいかない場合、異議申立を行うことができます。「70%以上というのはひどすぎる」とお考えの方は、ご相談下さい。状況を伺って過失割合を下げられる可能性があれば、異議申立の手続をお手伝いいたします。
6,「100%あんたが悪い」と言われたとき?
100%自分が悪いとなると、自賠責保険による給付がなく、後遺障害に対する保険金も出ません。それでも相手方に5%でも過失があることが認められると、後遺障害の保険金が半額は出ます。あきらめずにご相談下さい。事故の状況を伺い、さらに事故現場を検証して詳しい「事故状況報告書」を作成して、相手方にも過失がわずかだがあることを伺わせることができる場合があります。